お知らせ

【イベントレポート】3/2(木)開催「inno-base TSUKUBAの可能性」

2023年06月01日

レポート

夢を追いかけ、未来を切り拓く――inno-base TSUKUBA(イノベースつくば)がその舞台となる。

科学技術都市、つくば市に立地する「inno-base TSUKUBA」は、革新的なアイデアと起業家精神を持つイノベーターやスタートアップ企業たちの夢を叶える場所として、2023年3月に完成しました。未来を担う人材たちが集い、技術革新が進むこの空間が生み出すビジネスの可能性は無限大。この舞台が次世代の未来を創造する原動力となります。

4月のオープンに先立ち、3月2日のこの日、プロロジス日本初のインキュベーション施設「inno-base TSUKUBA」の魅力を余すところなく紹介するオンライン説明会を実施しました。施設が提供する多くのサービスを紹介しながら、起業家たちの経験と、その軌跡を共にたどる。どの内容もたいへん興味深く、新しい発見に満ちていました。

<登壇者>

屋代 知行氏(つくば市政策イノベーション部 スタートアップ推進室長)

つくば市出身。大学卒業後(化学専攻)、民間研究職を経て2006年につくば市役所へ入庁。母子保健、経済産業省(2008~2010年)、政策企画、防災、シティプロモーション、現市長直轄の政策マネジメント担当を経て現職。第1期プラチナ構想スクール修了、第4期NEDO-SSAフェロー。

伊藤 茜氏(株式会社Doog 管理部)

2008年4月 つくば市役所入庁
経済部農業課、市長公室企画経営課、経済産業省立地環境整備課(派遣研修)を経て、経済部産業振興課に配属。企業誘致・ベンチャー支援・創業支援等の業務を担当。
2017年10月 つくば市役所退職

岡澤 一弘氏(株式会社KURANDO 代表取締役)

大学を卒業後、株式会社キーエンスにて物流業界向けサービスのキャリアを開始。
実際に現場を改善するのは ハードウェアそのものではなく、運用にある。という気づきのもと同社を退職、さまざまなコンサルティング業務や IT支援業務にその軸足を移す。
株式会社KURANDOを創業後、クラウド型倉庫内視える化サービス「ロジメーター」を提供。物流現場のデータ利用を進めている。

小川 嶺氏(株式会社タイミー 代表取締役)

1997年4月13日生まれ。立教大学経営学部在学中。
さまざまなアルバイト経験から「応募から勤務、報酬の受け取りが一つのアプリで完結できたら」と感じ、スキマバイトアプリ「タイミー」の開発に着手。2018年8月10日よりサービスを開始。
「一人ひとりの時間を豊かに」というビジョンのもと、さまざまな業種・職種で手軽に働くことができるプラットフォームを目指す。

森田大輔(プロロジス 開発部 部長)

大学卒業後、株式会社大林組にてニュータウン開発事業、市街地再開発事業などに携わる。汐留の電通本社ビルPJでは建設現場で初のゼロエミッションを達成したことで内閣総理大臣賞を受賞。2004年プロロジス入社後は、九州や圏央道エリアを中心に数多くの物流施設開発を行う。

◆普通の施設ではつまらない。新しいことをやろう!

最初に、プロロジス開発部の森田氏が「inno-base TSUKUBA」 が生まれた背景を説明しました。

森田氏:「当時、マルチテナント型物流施設の新たなコンセプトを検討していた我々は、最初にECの自動化が急速に進んでいたアパレル特化施設を提案しました。しかし、弊社社長からは「それではつまらない。何かもっと新しいことを考えろ!」と一言。その言葉をきっかけに、我々は更なるアイデアを模索し始めました。プロロジスが持つ物流業界でのネットワークと創造性を最大限に生かす方法とは何か? その結果、ついに『inno-base TSUKUBA』のコンセプトにたどり着きました。周囲に多数の大学や研究機関があるつくば市ならではの、スタートアップ企業やイノベーターにとって最適な環境を提供することができる、まったく新しいコンセプトの施設です。」

ただのインキュベーション施設にとどまらず、プロロジス独自の特長を融合し、起業家の夢を具現化するための様々のアイデアを練り上げ、盛り込んだこの施設は、まさにプロロジスのチームのスピリットと創造性の賜物だと感じさせました。

森田氏はinno-base TSUKUBAの特徴について説明を続けます。

森田氏:「まずはハード面。『inno-base TSUKUBA』は、最先端の物流施設内に専用オフィスがあり、実証実験エリアやシェア倉庫とも直結しています。実証実験エリアにはトラックが直接アクセスできるので、大型機器の搬入が可能。さまざまなアイデアをすぐに実験することができます。併設されているシェア倉庫には製品の試作品や商品の保管するなど、物流分野を中心とした商品開発のニーズに応えることができるのです。さらに、会議室や共有ラウンジを備えており、交流スペースとしても利用可能です。」

トラックバース、倉庫と直結した実証実験エリア

自然な照明でリラックスできるラウンジ

森田氏:「また、ソフト面での支援も充実しています。 プロロジスがこれまで培った顧客ネットワークを駆使して、スタートアップの成長をバックアップ。つくば市とも「スタートアップ推進に関する協定」を締結しているため、さまざまな支援を受けることができます。さらに、スタートアップ支援に実績のある株式会社ツクリエが、事業成長のためのサービスを提供。このように、『inno-base TSUKUBA』では、ハードとソフト両面で企画から販売までスタートアップを支援します。「試作品の実験はその都度、郊外で行っている」「部品の保管は事務所から離れたトランクルームを借りている」「大型の試作品を展示会などに運搬するのが大変」「製品には自信があるが販売するルートがない」…。こうした課題をお持ちのスタートアップやベンチャーの方多いと思いますが『inno-base TSUKUBA』なら、これらの課題がすべて解決できるのです」

ハード、ソフト両面において、利用者目線で設計された「inno-base TSUKUBA」は、ベンチャーやスタートアップが夢を実現するために必要なあらゆる要素を備えた施設だということを実感しました。「プロロジスと一緒に2年で結果を出す」というキャッチコピーの通り、数年後、この施設から、革新的な企業が誕生する光景が目に見えるようでした。

◆スタートアップを支援するつくば市の体制とは?

森田氏からの説明によって「inno-base TSUKUBA」のイメージが明確になったところで、次のパートでは、つくば市政策イノベーション部スタートアップ推進室長の屋代知行氏による市の紹介と支援制度について、説明いただきました。
 
屋代氏:「長きにわたって研究学園都市として発展してきたつくば市は、アカデミックな環境が整備され、世界中から優秀な研究者たちが集まっていることが強みです。しかしその素晴らしい研究成果を、効果的にビジネスに結び付けられていないことがウィークポイントでした。
つくば市による資金援助も福岡市や神戸市といった大都市と比べて弱いため、今後、金銭面でのエコシステムを構築するためには、民間の支援機関や大企業と連携を強化し、より多くの支援を提供することが課題です。」

「研究開発型のスタートアップ企業は、一般的にはB2Bが多く、上場するよりもM&Aのほうがあっていると言えますが、その場合、重要になってくるのが大企業との提携です。プロロジスのようなグローバル企業との連携は、そうしたウィークポイントの解消に向け、たいへん有意義です。」

そのほか、つくば市のスタートアップ支援事業として、市が運営するコワーキングスペースや補助金の具体例、実証実験に関するスタートアップとの協業メニューなどについても紹介。つくば市は、今後も積極的に支援を行うとの意向を示しており、スタートアップや起業を目指す方々にとって、今後さらに魅力的な場所となっていくことは間違いありません。

◆公務員からベンチャーへ。支援する側から支援を受ける側になって

その後は、3名のゲスト登壇者による活気に満ちたベンチャートークが繰り広げられました。
登壇したのは、元つくば市役所で産業振興課に勤務した経験を持ち現在は株式会社Doog管理部に在籍している伊藤茜氏、クラウド型倉庫内視える化サービス「ロジメーター」を提供する株式会社KURANDO代表取締役の岡澤一弘氏、そして、スキマバイトアプリ「タイミー」を提供する株式会社タイミーの代表取締役 小川嶺氏の3名です。

伊藤氏からは「支援をする側からされる側にかわる」という稀有な経験にもとづく興味深いお話を聞くことができました。

伊藤氏:「私は新卒でつくば市役所に入所後、つくば研究支援センターに出向しました。その後、2017年に、移動ロボットを開発する民間企業「Doog」に転職。公務員時代に多くの会社とかかわる中で、会社の規模に関係なくおもしろい会社は数多くあると知ったことが、ベンチャー企業へ挑戦するきっかけでした。
民間企業に転職してからは、つくば市のような行政からの支援は、ベンチャーとしてはとてもありがたい存在だと実感しました。職員は支援をすることに慣れているうえ、法制度の改正にも詳しいので、「Doogさん、これを試してみてはどうですか?」と先方から声をかけてもらったこともあります。」

現在は、実証実験場所の提供や資金面での支援を受けているそうですが、驚いたのは、法律上の問題をクリアするために、市が警察と相談するための場を設けてくれたというエピソードでした。
つくば市役所と民間企業の双方を経験する伊藤氏だからこそ、その口から語られるつくば市の魅力は、説得力に満ちています。つくば市はそこまで手厚い支援をしてくれるのかと、聞いているこちらまで感動しました。

◆事業がうまくいかなかった場合の方向転換はどうするか

次にお話いただいたのは、プロロジスと関係の深いスタートアップの代表、株式会社KURANDOの岡澤一弘氏と株式会社タイミーの小川嶺氏のお2人です。
岡澤氏と小川氏からは、自社の業務やプロロジスとの出会いについてお話しいただいたあと、視聴者からの質問にお答えいただきました。

Q:事業がうまくいかなかった場合の、方向転換のタイミングや考え方について教えてください

岡澤氏:「事業がうまくいかない場合はすぐに動くことが大事です。筋の悪いものを減らして、良いものにウェイトを集中する必要があるので、やめるタイミングは早ければ早いほど良いです。」

小川氏:「自分も岡澤さんと同じく、自分がまずいと思った瞬間が撤退のタイミング。重要なのは市場の状態です。成長している業界はチャンスがありますが、縮小している業界ではチャンスは少ない。だから、自分たちが取り組んでいる業界が将来的に伸びていくかどうかが重要な判断基準となります。」

うまいかない場合は躊躇なく撤退する――即断即決の重要さを感じさせる両氏の言葉は、ビジネスの最先端、最前線に立つことが出来る「inno-base TSUKUBA」の優位性を感じさせるものでした。

◆コロナ禍の影響とプロロジスの支援

また、コロナ禍がビジネスに与えた影響についての質問がありました。
岡澤氏によると、KURANDOの営業活動にとってコロナ禍はむしろプラスに働いたそうです。

岡澤氏:「これまで対面営業が基本だった物流業界において、リモートが可能になったことは大きなメリットです。物流の倉庫は遠方にあることが多く、今まで商談には多大な時間と人員が必要でしたが、リモート化によって1/3から1/4ほどで回せるようになりました。」

そのおかげで少ない労力でも全国展開が可能になったそうです。全国に支店をもつ大企業と同じ土俵で戦えるのは、KURANDOのような事業を行うベンチャーにとって大きなチャンスになったのではないでしょうか。
逆に、スキマバイトアプリのタイミーは、コロナ禍で大きなダメージを受けたそうです。

小川氏:「サービスをリリースした2019年当時の顧客割合は飲食業が約65%と半数以上を占め、物流業はわずか7%。しかしコロナ禍により飲食業界は激変、タイミーも大きなピンチを迎えました。そこへ現れた救世主がプロロジスです。同社の協力によって物流業界に接点を持つことができ、翌年には物流が約63%まで増加。飲食業界の穴を埋めて、危機を脱することができたのです。」

プロロジスからは、物流業界のイロハを手取り足取り教えてもらい、クライアントを紹介してもらう際にも同席して有益なアドバイスを受けたり、業界が直面する2024年問題についてのディスカッションにも参加させてもらっているそうです。

グローバルな視点からの知見を得られるうえ、親身になって相談にのってくれるプロロジスは、新しい事業の未来を考える上で理想的なパートナーといえるでしょう。

このような話からも、ビジネスの舞台として成長が期待される「inno-base TSUKUBA」。視聴されていた参加者からも、たくさんの質問がよせられ、オンライン上のイベントでありながら、会場にいるかのような熱気のある説明会になりました。多くの方が、今後の発展に向けた有益なヒントをみつけられたことと思います。

◆登壇者から視聴者へのひとこと

最後に、登壇された3名から視聴者へのメッセージをいただきました。

小川氏:「プロロジスさんとのプロジェクトは絶対に入ったほうが良いです!
物流ってやっぱり実際の現場に向き合わないと何もわからないと思っているのですが、実際に現場に向き合ってみて大切なのはPDCAをどれほど早くまわせるかだと思います。プロロジスさんほどの協力体制をもってくれる会社というのは他にはないと思うので、もし入居を迷っている方がいらしたら、ぜひ決断されると良いと思います!」

岡澤氏:「プロロジスさんは、あたたかみのある企業だと思います。
KURANDOとプロロジスさんのおつきあいが資本提携する前からあったことを考えると、今回もしinno-base TSUKUBAに入居されるとしたら、たとえ資本関係がなくてもきっとお手伝いをしてくれる会社だと思います。プロロジスさんからみて、一生懸命やっているな、業界を良くしそうだな、見どころがあるな、と思ってもらえたら、いろいろ協力してもらえると思います。私自身も、プロロジスさんのウェビナーで三菱食品さんと出会い、その後お客様となっていただいたり、プロロジスさんが出展されていた展示会のブースで花王さんと打ち合わせする機会をいただいたりと、本当にありがたい経験をしています。」

伊藤氏:「つくば市のバックアップも強力!
プロロジスさんの魅力はもちろんですが、つくば市のバックアップも強力ですので、ぜひ頼っていただけると良いと思います。同じつくばの地で事業を広げていく会社が増えていくと、私も仲間が増えて嬉しいです。」